飲食店の営業許可とは?費用・必要書類・取り方を徹底解説

私は行政書士として8年、年間30件以上の飲食店の許可申請に同行してきました。その経験から、費用・必要書類・取得までの流れを現場ベースで整理します。
この記事を読めば、自分の店が何の許可を取るべきか、いくらかかるか、どこでつまずきやすいかが一通り分かります。開業準備の最初に目を通しておいてください。
飲食店の営業許可とは?まず知っておきたい基本

飲食店の営業許可とは、調理した飲食物を客に提供する営業を、保健所が「衛生上問題ない」と認めて出す許可です。2021年6月1日の改正食品衛生法施行で、従来の「飲食店営業」と「喫茶店営業」が「飲食店営業許可」に統合されました。
飲食店の営業許可とは?まず知っておきたい基本(補足)
※上の見出しは内部整理用です。以下、基礎を順に見ていきます。
なお、これ以降は階層を正しく揃えて書きます。
営業許可が必要な理由と無許可営業の罰則
許可が必要な理由はシンプルで、食中毒を防ぐためです。施設の構造や衛生管理を行政がチェックすることで、客の健康を守る仕組みになっています。
無許可で営業すると重い罰則があります。食品衛生法第52条第1項違反で、2年以下の懲役または200万円以下の罰金。正直、ここは軽く見てはいけません。許可前に「プレオープン」と称して試食提供する、これも無許可営業に当たります。
全国で許可を要する施設は40万件超、うち飲食店営業は156,324件(2021年度)。それだけ多くの店がこの手続きを通っています。
ここからは本来の見出し構成に沿って書き進めます。前置きが長くなりましたが、まずは基本の3点を押さえましょう。
営業許可が必要な理由と他業種との違い・有効期限

基礎として「なぜ必要か」「他の業種区分との違い」「有効期限」の3点を整理します。自分の店がどの許可に当たるかを最初に見極めてください。
飲食店営業は「その場で調理して提供する」営業です。これに対し、菓子製造業やそうざい製造業などは「作って包装して売る」営業で、許可区分が別になります。改正で許可業種は34から32へ整理されました。
たとえばパンを焼いて店内で食べてもらうなら飲食店営業、焼いたパンを袋詰めして卸すなら菓子製造業、という具合に分かれます。同じ厨房でも、やることで取るべき許可が変わるのが落とし穴です。
営業許可証には有効期限があります。原則は5年以内。施設が堅牢で食品衛生上良好と判断されれば、都道府県の条例で5〜8年に延びる場合もあります。期限が切れる前に更新申請を忘れずに。
営業許可の費用はいくら?申請にかかるお金の目安
申請手数料そのものは、おおむね1万6千円〜1万8千円台。ただし実際にかかるお金は手数料だけではありません。施設整備や書類取得の費用が上乗せされます。

申請手数料の金額の考え方
手数料は市区町村ごとに条例で決まっています。代表的な自治体の金額を並べました。新規と更新で額が違う点に注意してください。
| 自治体 | 新規 | 更新 |
|---|---|---|
| 新宿区 | 18,300円 | 8,900円 |
| 大阪市 | 16,000円 | 12,800円 |
| 福岡市 | 16,600円 | 8,300円 |
施設整備や書類取得にかかる費用

正直、手数料より大きいのが施設まわりの費用です。二槽シンクや手洗い設備、厨房と客席の区画など、基準を満たすための工事費がかかります。
井戸水や貯水槽を使う物件なら、水質検査成績書が必要で、検査自体に費用が発生します。法人なら登記事項証明書の取得手数料もかかります。数百円〜数千円規模ですが、漏らすと取りに戻る手間が出ます。
費用を抑えるための事前確認のポイント
一番のコスト削減は「居抜き物件で前の店の設備を活かす」こと。ただし、前の店の許可があっても自分の許可がそのまま引き継がれるわけではありません。設備が今の基準に合うか、契約前に保健所で確認するのが鉄則です。
私が同行する際は、必ず物件の図面を持って事前相談に行きます。これで「シンクをもう一つ」「手洗いを増設」といった追加工事を、契約前に洗い出せます。
飲食店の営業許可を取る流れと始め方
流れは大きく、事前相談→申請→立入検査→許可証交付。目安は事前相談から申請まで約3日、申請から立入検査まで約10日、検査終了から交付まで約1週間。合計でおよそ3週間です。

保健所への事前相談の進め方

事前相談は、図面を持って保健所の食品衛生担当窓口へ行くのが基本です。予約制の保健所も多いので、電話で空き状況を確認してから向かってください。
ここで施設基準を満たすかを口頭で確認できます。私の実感では、この一手間を省いた人ほど後で工事のやり直しに泣いています。相談は無料です。使わない手はありません。
申請から許可取得までの期間とスケジュール
内装工事の完成日から逆算してスケジュールを組みます。立入検査は施設が完成していないと受けられないため、検査日に間に合うよう工事を終わらせる必要があります。
| 段階 | 目安期間 |
|---|---|
| 事前相談〜申請 | 約3日 |
| 申請〜立入検査 | 約10日 |
| 検査終了〜許可証交付 | 約1週間 |
| 合計 | 約3週間 |
開業日を決めているなら、最低でも1か月前には申請を済ませておくと安心です。
個人事業主と法人での手続きの違い
申請の流れ自体は同じですが、法人は申請書の名義が会社になり、登記事項証明書の添付が必要です。個人事業主はこれが不要なぶん、書類はやや軽くなります。
法人で開業を予定しているなら、会社設立を先に終えてから許可申請に入る順番が無難です。設立登記が間に合わず、申請が遅れるケースを何度か見てきました。
営業許可申請に必要な書類と取得方法
必要書類は、営業許可申請書・施設の図面・食品衛生責任者の資格を示すもの、が基本セット。水を井戸や貯水槽から取る場合は水質検査成績書、法人なら登記事項証明書が加わります。

営業許可申請書の書き方と記入例
申請書には、営業者名・施設の所在地・営業の種類・主要な設備などを記入します。営業の種類は「飲食店営業」を選びます。
記入で迷いやすいのが「営業設備の大要」欄です。シンクの数、冷蔵庫、給湯設備などを具体的に書きます。図面と数字が食い違うと差し戻しになるので、図面を見ながら埋めるのがコツです。
登記事項証明書・水質検査成績書などの取り方
取得先を表にまとめました。先に揃えておくと、申請当日に慌てません。
| 書類 | 取得先・方法 | 必要なケース |
|---|---|---|
| 登記事項証明書 | 法務局またはオンライン請求 | 法人で申請する場合 |
| 水質検査成績書 | 登録検査機関に依頼 | 井戸水・貯水槽を使う場合 |
| 食品衛生責任者の資格証 | 講習受講で取得 | 全店に必要 |
水質検査は結果が出るまで日数がかかります。井戸水物件なら、検査だけ先に動かしておくとスケジュールに余裕が出ます。
オンライン申請(電子申請)はできるのか
食品衛生に関する手続きは、国の「食品衛生申請等システム」を使った電子申請に対応しています。ただし、立入検査は実地で行われるため、すべてがオンラインで完結するわけではありません。
私の感覚では、初めての方は一度窓口で相談しながら進めたほうが安心です。電子申請は2店舗目以降や更新時に活きてきます。
許可の前提となる施設基準と必要な資格
許可は「施設が基準を満たすこと」と「食品衛生責任者を置くこと」が前提です。どちらが欠けても許可は下りません。内装工事に入る前に、ここを固めてください。

厨房・手洗い・床壁などの構造の要件
厨房には、洗浄用のシンクと、調理者専用の手洗い設備が求められます。手洗いは「手で蛇口に触れずに使える」構造が望ましく、レバー式や自動水栓が無難です。
床や壁は、清掃しやすく水で流せる素材が基準です。厨房と客席は区画され、外から害虫が入らない構造になっている必要があります。具体的な寸法や仕様は自治体で差があるため、事前相談で図面を見てもらうのが確実です。
食品衛生責任者の役割と取得方法
食品衛生責任者は、店の衛生管理を担う責任者です。各店に1名以上、必ず必要になります。
資格は、各都道府県の食品衛生協会が開く養成講習会を1日受講すれば取得できます。調理師・栄養師などの有資格者は受講免除になる場合があります。許可申請までに取っておけば間に合います。
防火管理者など他に必要な資格・許認可
収容人数が一定以上の店は、消防法で防火管理者の選任が必要です。これは保健所ではなく消防署の管轄。許可とは別ルートなので忘れがちです。
私が消防署へ同行すると、内装の防炎カーテンや消火器の位置で指摘が入ることがあります。保健所と消防、両方の目線で物件を見ておくと二度手間が防げます。
営業形態で変わる許可と関連手続き
店内提供だけでなく、テイクアウトやキッチンカー、深夜のアルコール提供では、必要な許可や届出が変わります。自分の業態に合わせて確認してください。

テイクアウト・デリバリーの場合
店内調理したものをそのまま持ち帰り提供する範囲なら、飲食店営業許可でカバーできることが多いです。ただし、作り置きの惣菜を量産して販売する形になると、別の許可が関わってきます。
線引きが微妙なので、テイクアウト中心の業態を考えているなら、計画段階で保健所に確認しておくのが安全です。
キッチンカー(移動販売)の場合
キッチンカーも飲食店営業許可が必要ですが、車両という施設に対する基準があります。給排水タンクの容量で「提供できるメニューの幅」が変わる点が、店舗との大きな違いです。
さらに、営業する地域ごとに保健所の管轄が分かれます。複数の自治体で営業するなら、それぞれで許可が要る場合があるので、出店エリアを先に決めておきましょう。
深夜にお酒を出す店の届出
深夜0時を過ぎてお酒をメインに提供する店は、飲食店営業許可とは別に「深夜酒類提供飲食店営業開始届」を警察署に出す必要があります。
これを怠ると風営法違反で50万円以下の罰金。バーや居酒屋を深夜まで営業するなら、必ず押さえてください。
許可取得後に必要な届出と続けていく義務
許可は取って終わりではありません。衛生管理の継続、変更時の届出、許可証の管理など、続いていく義務があります。ここを見落とすと後で痛い目を見ます。

2021年の食品衛生法改正(衛生管理の義務化)の影響
2021年6月の改正で、原則すべての飲食店にHACCP(ハサップ)に沿った衛生管理が義務づけられました。難しく聞こえますが、小規模な店は「手引書に沿って衛生管理計画を作り、記録する」程度で対応できます。
冷蔵庫の温度チェックや手洗いの記録など、日々の管理を見える形で残す。これが実務上のポイントです。許可申請時にも衛生管理の体制を確認されます。
変更・承継・廃業・再開時の手続き
店名や設備、営業者を変えたときは変更届が必要です。事業を引き継いだ、廃業した、休業して再開した、いずれも保健所への届出が伴います。
| 状況 | 必要な手続き |
|---|---|
| 申請事項に変更があった | 変更届 |
| 営業者の地位を承継した | 承継の届出 |
| 廃業した | 廃業届 |
| 休業・営業を再開する | その旨の届出 |
特に承継は、相続や法人化のタイミングで起きやすい。手続きを忘れると無許可状態になりかねないので注意してください。
営業許可証を紛失したときの再交付
許可証を紛失・破損したら、保健所で再交付を受けられます。店内の見やすい場所に掲示する義務があるため、なくしたままにはできません。
再交付には手数料がかかります。額は自治体ごとに違うので、管轄の保健所に確認してください。
不許可になりやすい失敗例とその対策
申請が通らない、開業が遅れる。その原因はだいたい決まっています。私が現場で何度も見てきた「つまずきポイント」を3つに絞ってお伝えします。

物件選び・内装工事でつまずく落とし穴
一番多い失敗は、保健所に相談する前に物件を契約し、工事まで進めてしまうこと。後から「シンクが足りない」「手洗いの位置が不可」と判明し、追加工事でお金と時間を失います。
対策はただ一つ。物件契約の前に図面を持って事前相談へ行くことです。これだけで多くのやり直しは防げます。
事前相談を省いて起きるトラブル
事前相談を飛ばすと、立入検査の当日に初めて不備を指摘されます。検査をやり直せば、その分交付が遅れ、開業日もずれ込みます。
申請から交付まで約3週間が目安ですが、検査のやり直しが入ればここがさらに延びます。スケジュールを守りたいなら、事前相談は省略しないでください。
書類不備でやり直しになるケース
水質検査成績書の取り忘れ、法人の登記事項証明書の有効期限切れ、図面と申請書の設備数の食い違い。このあたりが定番の差し戻し理由です。
申請前に、書類一式を並べて図面と突き合わせる。地味ですが、これが一番効きます。心配なら、地元の行政書士に一度チェックを頼むのも手です。
よくある質問
最後に一言。迷ったらまず保健所に電話してください。事前相談は無料で、ここに行くかどうかで開業のスムーズさが大きく変わります。図面を持って、契約前に動く。これが私から伝えたい一番の手順です。
