飲食店の営業許可とは?取得の流れ・費用・必要書類を徹底解説

私は飲食・風営法専門の行政書士として8年、保健所や消防署に同行しながら申請をサポートしてきました。その現場で見てきた「つまずきやすい所」を中心に、流れ・費用・必要書類・検査のコツまで一気に整理します。
この記事で分かること。許可の意味と対象業態、申請から交付までのステップ、費用の総額感、食品衛生責任者やHACCPの対応、変更・更新・廃業の手続き、そしてよくある不許可事例の回避策です。
飲食店の営業許可とは?基礎からわかる仕組み

まず大前提から。飲食店を含む食品営業の許可制度は、食品衛生法に基づく制度です。食品を調理して客に飲食させる営業は、この許可の対象になります。
許可を出すのは国ではありません。施設の所在地を管轄する都道府県や政令市などの行政機関です。施設基準への適合が前提になります。
営業許可が必要な理由と対象となる業態
なぜ許可がいるのか。食中毒や衛生事故を防ぎ、客の健康を守るためです。お金を取って食べさせる以上、衛生面の最低ラインを行政がチェックする、という考え方です。
対象業種は2021年6月1日から改正後の区分が適用され、許可業種は全体で32業種に整理されました。飲食店営業はその一つです。
許可が必要な業態の例としては、レストラン、寿司屋、スナック、BARなどが挙げられています。要するに、店内で調理して提供するスタイルはほぼ該当すると考えていい。
食品衛生責任者・施設基準など押さえるべき前提
許可を取るには、食品衛生責任者を必ず置く必要があります。一般的な飲食店では、営業許可とセットで配置が求められます。
もう一つの柱が施設基準です。都道府県が条例で定める「営業施設基準」に合致しないと、そもそも許可は下りません。手洗い設備の位置や数、シンクの槽数など、細かく決まっています。
正直に言うと、ここを内装工事の前に確認しないと痛い目を見ます。完成後に基準不適合が判明し、追加工事になったケースを何度も見てきました。
業態別(カフェ・バー・テイクアウト・間借り)で異なる要件
同じ「飲食店営業」でも、業態によって注意点が変わります。私の実感では、ここを軽く見て準備不足になる方が多い。
バーやスナックで深夜に酒類を主に提供するなら、飲食店営業許可とは別の手続きが必要です。深夜酒類提供飲食店営業開始届など、風営法関連の届出が絡んできます。
テイクアウトやお菓子の販売を考えるなら、提供形態によって菓子製造業など別区分の許可が必要になることがあります。間借り(レンタル営業)は、貸主の許可で足りるのか自分で取り直すのか、保健所への事前確認が欠かせません。
営業許可取得までの流れと申請の進め方
ここからは実務です。申請先は保健所。申請書、図面、食品衛生責任者の資格証明などが必要書類として案内されています。

流れを知らずに動くと、工事のやり直しや申請の差し戻しで開業が遅れます。順番が命です。
事前相談から許可証交付までの全体ステップ
私がいつも勧めるのは、内装工事の図面ができた段階での事前相談です。工事に入る前に保健所へ図面を持ち込み、施設基準を満たすか確認してもらう。これだけで後の手戻りが激減します。
| 段階 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 事前相談 | 図面を持って保健所に相談 | 工事前に施設基準を確認する |
| 2. 申請 | 申請書・図面・資格証明を提出 | 施設検査日を予約する |
| 3. 施設検査 | 保健所が現地を検査 | 完成した状態で受ける |
| 4. 許可証交付 | 基準適合を確認後に交付 | 交付前は営業できない |
許可証が手元に届くまでは営業できません。ここは厳守。検査から交付までに数日かかる自治体もあるので、オープン日は余裕を持って組んでください。
保健所の施設検査でチェックされるポイントと事前準備
検査同行でよく見られるのは、手洗い設備の有無と位置、シンクの数、床や壁が清掃しやすい素材か、客席と調理場の区分、冷蔵設備の温度計、ふた付きのゴミ箱あたりです。
私の経験上、一番引っかかるのは手洗い場。「調理用シンクと手洗いを兼用していてアウト」というパターンが定番です。
検査は施設が完成した状態で受けるのが原則です。設備が未設置だと、その場で差し戻しになります。検査日には冷蔵庫の温度計や消毒液まで揃えておくと安心です。
オンライン申請(食品衛生申請等システム)の使い方
近年は厚生労働省の食品衛生申請等システムを使ったオンライン申請が可能です。GビズIDなどでログインし、営業所情報や業種、施設の図面情報を入力して申請します。
正直、初めての方には入力項目が分かりにくい面があります。私は紙とオンラインを併用しつつ、不明点は管轄保健所に電話で確認するのを勧めています。システム上で受付できても、施設検査は現地で行われる点は変わりません。
必要書類と記入の注意点
| 書類 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 営業許可申請書 | 店舗・申請者の基本情報 | 業種区分を間違えない |
| 施設の図面 | 設備配置が分かる平面図 | 手洗い・シンクを明記 |
| 食品衛生責任者の資格証明 | 講習修了証など | 申請時に未取得なら誓約書で対応する自治体も |
| 水質検査成績書 | 井戸水使用時など | 水道水なら不要なことが多い |
記入で多いミスは業種区分の選び間違いです。テイクアウトやデリバリーを兼ねるなら、必要な区分を事前相談で確定させておく。これで差し戻しを一つ減らせます。
営業許可にかかる費用の総額と内訳
費用の話。重要な前提として、営業許可の手数料は全国一律ではありません。都道府県・政令市・保健所設置市の条例や手数料で定められ、自治体ごとに異なります。

だから「営業許可は◯円」と一言では言えない。ここを誤解したまま資金計画を立てると、後で足りなくなります。
申請手数料の目安
手数料の正確な金額は、必ず管轄の保健所または自治体のサイトで確認してください。自治体の条例で決まっているため、同じ飲食店営業でも地域で差があります。
ここで私が言えるのは「手数料そのものは開業費全体から見れば小さい」ということ。資金計画で本当に効いてくるのは、次に挙げる周辺費用です。
設備投資・施設改修などの周辺費用
許可を取るために実際にお金がかかるのは、施設基準を満たすための設備や改修です。手洗い設備の増設、二槽シンクの設置、清掃しやすい床・壁への変更などがこれにあたります。
私の現場感覚で言えば、既存の飲食店物件(居抜き)と、何もないスケルトン物件では、ここの負担がまったく違います。居抜きでも、前の店の基準が今の基準に合わない場合があるので油断は禁物です。
具体的な金額は物件や規模で大きく変わるため、ここで一律の数字は出しません。確実なのは「申請手数料より、基準適合のための工事費のほうがずっと大きい」という点です。
行政書士に依頼する場合の費用相場とメリット・デメリット
自分でもできる申請です。実際、シンプルな飲食店なら自力で取る方も多い。ただ、深夜酒類提供や複数業種が絡むと、途端に難易度が上がります。
行政書士に頼むメリットは、図面チェックや事前相談、検査の段取りを任せられ、開業準備に集中できること。デメリットは当然ながら報酬が乗ること。正直、料金は事務所ごとに幅があるので、ここで相場を断定はしません。
私の立場で言えば、飲食店営業だけのシンプルな案件なら自分でやって十分。風営法や複数許可が絡む案件は、最初から専門家に相談したほうが結局早い、というのが本音です。
食品衛生責任者の資格とHACCPへの対応

許可と切り離せないのが、食品衛生責任者の設置と衛生管理です。前述のとおり、一般的な飲食店では食品衛生責任者の配置が求められます。
食品衛生責任者の資格取得方法(講習会の申込み・費用)
食品衛生責任者は、各地の食品衛生協会などが実施する養成講習会を受講して資格を得るのが一般的です。栄養士・調理師などの資格保持者は講習が免除される場合があります。
申込み方法や日程、受講料は実施団体ごとに異なります。日程が埋まりやすい時期もあるので、開業を決めたら早めに予約しておく。これは現場でよくある「講習が間に合わず開業がずれる」失敗の予防策です。
HACCPに沿った衛生管理の義務化への対応
今は、原則すべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が求められます。難しく聞こえますが、小規模な飲食店は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」で対応します。
やることはシンプルです。業界団体が出している手引書をもとに、温度管理や清掃などの衛生管理計画を作り、毎日記録を残す。最初は面倒でも、検査時に説明しやすくなるので結果的に楽になります。
営業許可と一緒に必要になる他の許認可・届出
営業許可だけで開業できると思っていると足をすくわれます。業態によっては、別の役所への手続きが並行して必要です。

防火管理者・深夜酒類提供飲食店営業届などとの関係
一定規模以上の店舗では、消防法に基づき防火管理者の選任と届出が必要になります。これは保健所ではなく消防署の管轄です。
そしてバー・スナックなどで深夜に酒類を主に提供する場合。これは飲食店営業許可とは別に、深夜酒類提供飲食店営業開始届など風営法関連の手続きが必要になることがあります。私が同行する案件で抜けやすいのが、まさにこの届出です。
クラウドキッチン・シェアキッチンでの扱い
ここは大事なポイント。営業許可は「人」ではなく「施設・場所」に対して交付されます。だからシェアキッチンで複数人が使う場合、誰が許可名義人になるのか、自分の営業に許可が及ぶのかを必ず確認する必要があります。
間借りやクラウドキッチンは「貸主の許可で営業できる」と思い込みがちですが、これは危険です。自分名義で取り直しが必要なケースもあるので、契約前に管轄保健所へ相談してください。
許可取得後の手続きと注意点(変更・更新・廃業)
許可は取って終わりではありません。営業を続ける中で、変更・承継・廃業・更新といった手続きが発生します。

申請事項の変更・営業者の地位承継・廃業の手続き
店名や設備を大きく変えたとき、法人化したとき、店を閉めたとき。それぞれに届出が必要です。変更があれば変更届、廃業すれば廃業届、と覚えておくと整理しやすい。
許可が施設・場所に対して交付される性質から、経営者が交代しても、所定の届出で許可を引き継げる扱いになっています。親から子へ店を継ぐようなケースで助かる仕組みです。
有効期間と更新を忘れた場合のリスク
営業許可には有効期間があります。期限が来る前に更新申請をしないと、許可は失効します。
失効すれば、その状態での営業は無許可営業になります。私が一番ヒヤッとするのが、これに気づかず営業を続けてしまうケース。許可証に書かれた有効期限は、開店当初にカレンダーへ転記しておくことを強く勧めます。
無許可営業や違反時の罰則・行政処分
脅すわけではありませんが、罰則は重いです。無許可営業は食品衛生法違反として、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が案内されています。
「知らなかった」では済みません。更新忘れも、間借りでの名義誤りも、結果として無許可営業になり得ます。だからこそ事前確認が一番のリスク対策です。
【現場の実例】よくある不許可・差し戻しと回避策

ここが、私が一番伝えたいパート。検査の差し戻しは「知っていれば防げた」ものがほとんどです。実際に現場で見てきたパターンを共有します。
差し戻しが起きやすい代表パターン
| 差し戻しパターン | 原因 | 回避策 |
|---|---|---|
| 手洗い設備の不備 | 調理シンクと手洗いの兼用 | 独立した手洗いを設置する |
| シンクの槽数不足 | 二槽シンク基準を満たさない | 工事前に基準を確認 |
| 床・壁の素材 | 清掃しにくい仕上げ | 防水・清掃しやすい素材に |
| 業種区分の誤り | 申請区分の選び間違い | 事前相談で区分を確定 |
| 検査時の未完成 | 設備が揃っていない | 完成状態で検査を受ける |
見ての通り、ほぼ全部が工事前の事前相談で潰せます。逆に言えば、相談を飛ばすと差し戻しの確率がぐっと上がる。
自治体ごとの基準の違いと確認方法
施設基準も手数料も、自治体の条例で定められています。だから隣の市の情報をそのまま当てにすると外します。
確認方法はシンプルです。管轄する保健所の公式サイトを見て、分からなければ電話で聞く。京都市や浜松市のように、自治体が許可業種や手続きをサイトで案内しています。自分の店の所在地を管轄する窓口を必ず一次情報として使ってください。
開業前チェックリスト
| 項目 | 確認できたか |
|---|---|
| 業種区分を保健所と確認した | □ |
| 工事前に図面で事前相談した | □ |
| 独立した手洗い設備がある | □ |
| シンクの槽数が基準を満たす | □ |
| 食品衛生責任者を確保した | □ |
| 衛生管理計画と記録を用意した | □ |
| 深夜酒類・防火など他の届出を確認した | □ |
| 許可証の有効期限を控えた | □ |
よくある質問(FAQ)
よくある質問
最後に一言。営業許可で開業が遅れる人の共通点は、工事前の事前相談を飛ばすことです。図面ができたら、まず保健所に行く。これだけで多くのトラブルは防げます。迷ったら、管轄の保健所に電話する一歩から始めてください。

