営業許可の取得期間は約3週間|流れ・費用・早めるコツを解説

私は行政書士として飲食店の開業支援を専門にしていて、年間30件以上の許可申請に立ち会っています。保健所や消防署にも同行するので、書面には出てこない「実際にかかる日数」も把握しているつもりです。
この記事では、申請から交付までの流れと各ステップの日数、必要書類と費用、業種ごとの違い、そして取得を早めるコツまでをまとめました。開業スケジュールを逆算したい方は、ここで全体像をつかんでください。
営業許可の取得期間は約3週間が目安

飲食店営業許可の取得期間は、事前相談から営業開始までで2〜3週間が目安です。内訳は、事前相談から申請書類作成まで約3日、申請処理と施設検査まで約10日、検査後の許可まで約1週間という流れになります。
準備が整っていて検査も一発で通れば、最短で約2週間というケースもあります。申請書類作成2日、施設確認検査7日、許可5日という組み合わせです。
以下、各ステップを詳しく見ていきます。
営業許可とは何かをやさしく解説
営業許可とは、飲食店や食品を扱う店が「衛生面で安全に営業できる」と保健所に認めてもらう手続きのことです。これがないと、調理して客に飲食物を提供する商売はできません。
許可は食品衛生法という法律に基づくもので、保健所が施設を検査し、基準を満たしていれば許可証が交付されます。つまり、お店の設備が衛生基準に合っているかをチェックする関門だと考えてください。
申請から交付までの全体像

流れはシンプルです。事前相談 → 申請 → 施設検査 → 許可書交付 → 営業開始。この5段階で進みます。
申請から許可決定までの一般的な期間は、申請が順調に進んだ場合で約10〜14日です。ここに事前相談や書類準備の数日が加わるので、トータルで3週間前後を見ておくと安全です。
| ステップ | 内容 | 日数の目安 |
|---|---|---|
| 事前相談・書類作成 | 保健所への相談、図面・書類の準備 | 約3日 |
| 申請〜施設検査 | 申請処理と検査日程の調整・実施 | 約10日 |
| 検査後〜許可 | 許可書の交付 | 約1週間 |
営業届出制度との違い
2021年の食品衛生法改正で、「営業届出制度」という仕組みが新しくできました。これは許可ほど厳格な検査が不要な業種を対象にした、届け出るだけで済む制度です。

たとえば常温で保存できる包装食品の販売など、リスクの低い業態が対象になります。許可と違って施設検査がない分、手続きは早く済みます。自分の業態が許可なのか届出なのか、ここは最初に保健所で確認しておくべきです。
ちなみに同じ改正で、すべての飲食店にHACCP(衛生管理の手法)に沿った管理が求められるようになりました。難しそうに聞こえますが、小規模店は簡略化された手引書に沿って記録すればよく、許可取得の日数を大きく延ばすものではありません。
営業許可取得までの流れと各ステップの日数
ここからは5つのステップを順番に解説します。特に重要なのは最初の「事前相談」です。ここを飛ばすと、検査でやり直しになり日数も費用も膨らみます。
保健所への事前相談

最初にやることは、保健所への事前相談です。店の図面を持っていき、設備の配置や手洗い場の位置が基準に合うかを確認してもらいます。
私が現場で一番強調しているのが、これを内装工事の「前」にやること。工事が終わってから「シンクの数が足りない」と言われると、作り直しで数十万円が飛びます。相談自体は無料で、その日のうちに終わることがほとんどです。
営業許可の申請
工事のめどが立ったら、必要書類をそろえて保健所に申請します。申請のタイミングは、施設が完成する10日ほど前が目安です。
申請の段階では施設が完全に出来上がっていなくても受け付けてくれる自治体が多いです。早めに申請しておくと、検査日程を前倒しで押さえられます。
施設検査の日程調整と実施
申請を受けると、保健所と検査日を調整します。検査では、担当者が実際に店舗へ来て、シンクの数、手洗い設備、冷蔵庫の温度計の有無などを一つずつチェックします。

この検査日は希望どおりに取れないこともあります。月末や開業が集中する時期は予約が埋まりやすいので、早めの申請が効いてきます。
営業許可書の交付・営業開始

検査に合格すると、数日後に許可書が交付されます。許可証の到着日と営業開始可能日は一致しないことが多く、実査後の2〜3日後から営業を許可されるケースもあります。
開店日を決めるときは、許可書を受け取った日を起点にするのが安全です。許可前に営業すると無許可営業になり、罰則の対象になります。
営業許可申請に必要な書類と費用
書類と費用は、ここでつまずく人が意外と多いところです。費用は法定手数料で約2万円程度。書類は施設の図面と資格の証明が中心になります。
申請時に必要な書類一覧
申請に必要な主な書類は次のとおりです。自治体によって細かな違いがあるので、事前相談のときにリストをもらっておくと確実です。
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 営業許可申請書 | 保健所の所定様式に記入 |
| 施設の図面(平面図) | 設備の配置がわかるもの |
| 食品衛生責任者の資格証明 | 受講修了証など |
| 水質検査成績書 | 井戸水・貯水槽を使う場合 |
| 登記事項証明書 | 法人の場合のみ |
保健所に支払う手数料の目安
手数料は業種と自治体で変わります。新宿区を例にすると、飲食店営業は18,300円、喫茶店営業は11,500円です。

地域によって幅があり、新規取得は1万6,000〜1万9,000円、更新は8,000〜1万2,000円というのが一般的なレンジです。
| 項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 飲食店営業(新宿区) | 18,300円 |
| 喫茶店営業(新宿区) | 11,500円 |
| 新規取得(地域による幅) | 16,000〜19,000円 |
| 更新(地域による幅) | 8,000〜12,000円 |
| 行政書士への依頼料 | 30,000〜100,000円 |
個人事業主と法人で異なる準備書類
許可申請自体は個人でも法人でも流れは同じです。違いは添付書類にあります。
法人で申請する場合は、登記事項証明書(登記簿謄本)が追加で必要です。申請者の名義は法人名になるので、代表者個人ではなく会社として許可を取る形になります。この点を勘違いして個人名で申請してしまうと、取り直しになるので注意してください。
営業許可を取得するための要件と資格
許可を取るには、満たすべき要件があります。中でも必須なのが「食品衛生責任者を1名置くこと」と「施設が衛生基準を満たすこと」の2つです。
食品衛生責任者を置く(資格取得の日数も含む)
店舗ごとに食品衛生責任者を1名置く必要があります。調理師や栄養士の資格があればそのまま該当しますが、無資格の場合は1日の講習を受ければ取得できます。
ここで見落としがちなのが、講習の予約待ちです。人気の日程はすぐ埋まり、1〜2か月先になることもあります。開業を決めたら、まず講習の予約を取る。これを最初に動かすだけで、全体のスケジュールがぐっと楽になります。
保健所の検査基準をクリアする
施設検査では、手洗い設備、二槽シンク、冷蔵庫、換気設備などが基準を満たしているかを見られます。基準は自治体ごとに細部が異なるため、事前相談で図面を見てもらうのが確実な近道です。

私の経験上、不合格の原因で多いのは「手洗い場の蛇口が手で触れるタイプ」「シンクの数が足りない」の2つ。事前相談で潰しておけば、ほぼ一発で通ります。
防火管理者・深夜酒類提供の届出が必要な場合
収容人数が30名以上の店では、防火管理者の選任と消防への届出が必要です。これは保健所ではなく消防署の管轄なので、別ルートで進めます。
深夜0時を過ぎて酒類を主に提供するバーや居酒屋は、「深夜酒類提供飲食店営業開始届」を警察署に出す必要があります。営業開始の10日前までに届け出る決まりなので、該当する業態は逆算して動いてください。
業種別に見る営業許可取得期間の違い
「飲食店」ばかり解説されがちですが、菓子製造やキッチンカーは事情が違います。ここは競合記事でも薄いので、実務目線で補足します。
菓子製造業・食肉販売の場合
菓子製造業や食肉販売も、飲食店と同じく「許可」が必要な業種です。取得までの大まかな期間は飲食店と同程度の2〜3週間ですが、製造に使う専用設備の基準が厳しい点が違います。
たとえば菓子製造では、製造室と販売スペースを明確に分ける必要があります。この区画が曖昧だと検査で引っかかるので、内装段階での相談がより重要になります。
移動販売・キッチンカーの場合
キッチンカーは「飲食店営業(移動販売)」として許可を取ります。店舗と違うのは、車両自体が検査対象になること。給水・排水タンクの容量や、調理スペースの広さがチェックされます。

さらに注意すべきは、許可は自治体ごとということ。営業したい地域が複数の保健所にまたがるなら、それぞれで許可を取る必要があり、その分日数も増えます。私が相談を受けたケースでも、ここを知らずに営業エリアを絞り込めず、開業が遅れた方がいました。
ネット販売・複数業種を扱う場合
ネットで食品を売る場合、扱う商品によって必要な手続きが変わります。自分で製造して売るなら製造業の許可が、仕入れた包装食品を売るだけなら届出で済むこともあります。
複数の業態を1店舗で扱うと、それぞれに許可が必要になるケースがあります。たとえば店内飲食と菓子の製造販売を両方やるなら、飲食店営業と菓子製造業の2つを取る形です。許可が増えれば検査項目も増え、その分準備期間も延びます。
営業許可の取得を早めるコツと注意点
最後に、現場でやり取りしてきた中で「これをやると早い・これをやると遅れる」という実践的なポイントをまとめます。
内装工事の前に事前相談すべき理由
もう一度言います。事前相談は工事の前です。これが最大の時短テクニックだと私は考えています。
工事後に基準を満たさないと分かれば、改修工事のやり直しで1〜2週間、ひどいと1か月単位で遅れます。図面段階で保健所のOKをもらっておけば、検査は確認作業で済み、一発合格しやすくなります。
オンライン申請システムの活用
厚生労働省の「食品衛生申請等システム」を使えば、許可申請をオンラインで進められます。保健所に何度も足を運ぶ手間が減るのが利点です。

ただし、施設検査は実地で行われるため、オンラインで完結はしません。書類のやり取りが効率化される、と捉えるのが正確です。それでも、平日に役所へ行く時間が取りにくい個人事業主には助かる仕組みです。
検査で不合格になった場合の再検査と追加日数
万一検査で不合格になっても、終わりではありません。指摘箇所を直して再検査を受ければ許可は下ります。
問題は追加日数です。再検査の日程を取り直すので、数日から1週間ほど後ろにずれます。改修工事が必要なら、さらに延びます。だからこそ、事前相談で潰しておく価値があるわけです。
居抜き物件で許可を引き継げるか
よく聞かれるのが「前のお店の許可をそのまま使えますか?」という質問。答えはノーです。営業許可は申請者ごとのもので、引き継げません。
居抜きで設備がそろっていても、新たに自分名義で申請し、検査を受け直す必要があります。ただし設備が基準を満たしていれば検査は通りやすく、ゼロから作るより準備期間は短く済みます。ここは居抜きの数少ないメリットです。
営業許可の更新・変更手続きと無許可営業のリスク
許可は取って終わりではありません。有効期限があり、更新が必要です。期限切れに気づかず営業を続けると、無許可営業として罰則の対象になります。
更新は有効期限の1カ月前までに行う
営業許可の有効期限は原則5年です。実際の自治体では5年〜8年で設定されることが多く、47都道府県のうち35県が5年〜8年の範囲で運用しています。

更新は、有効期限の1か月前までに申請するのが原則です。期限は許可証に書かれているので、開業時にカレンダーに印を付けておくと安心です。
営業者変更・施設変更の届出と期間
営業中に内容が変わったら、届出が必要です。たとえば法人の代表者が変わった、店舗を改装して設備配置を変えた、といったケースです。
内容によっては再検査が必要になり、その分の日数がかかります。大きな改装を予定しているなら、着工前に保健所へ相談しておくのが結局いちばん早いです。
無許可営業の罰則
許可なく営業すると、食品衛生法違反になります。許可が下りる前にプレオープンしてしまうのも違反です。
更新を忘れて期限切れのまま営業を続けるのも同じく無許可営業にあたります。罰則の対象になるので、期限管理は甘く見ないでください。許可は店の信用そのものです。
営業許可の取得期間に関するよくある質問
よくある質問
開業準備は、やることが多くて優先順位を見失いがちです。もし今日から動くなら、私はまず2つを勧めます。食品衛生責任者の講習予約と、物件の図面を持っての保健所への事前相談。この2つを先に押さえれば、3週間後の開店が現実的に見えてきます。
