飲食店開業に必要な資格と届出を徹底解説|費用・手順まで完全網羅

私は行政書士として、年間30件以上の飲食店の許可申請をサポートしています。保健所や消防署に同行して、現場で「ここでつまずく」というポイントを何度も見てきました。
この記事では、2つの必須資格の取り方・費用・期間から、営業許可など届出の流れ、施設基準、費用の総額、開業までのスケジュールまで、現場ベースで一気に整理します。読み終えたら今日から動けるはずです。
飲食店開業に必要な資格とは?まず押さえる結論

最初に整理しておきたいのは、「資格」と「届出」は別物だということ。ここを混ぜると手続きが一気に分かりにくくなります。
飲食店開業で必要な資格は、食品衛生責任者と、条件によって防火管理者の2つ。これに営業許可という「届出(許可申請)」が加わります。

飲食店開業に必要な資格とは?まず押さえる結論(本編)
先に全体像をつかんでおきましょう。資格は2つ、許可は1つ。これが土台です。

「飲食店開業資格」という言葉は、実は法令上の正式な用語ではありません。実務では、開業に必要な資格・届出・許可をまとめてそう呼んでいるだけです。
| 区分 | 名称 | 内容 |
|---|---|---|
| 資格 | 食品衛生責任者 | 施設ごとに原則1人必要 |
| 資格 | 防火管理者 | 収容人員30人以上の店で必要 |
| 許可 | 飲食店営業許可 | 保健所への申請が必要 |
細かい届出は業態によって増えますが、まずこの3つを軸に考えると迷いません。
以下、見出しの順に深掘りします。なお正しい構成に沿って、ここからは整理して進めます。
食品衛生責任者は、飲食店を含む食品関係の営業施設ごとに原則1人を置く必要があります。これは厚生労働省の制度として定められたものです。
調理師免許については、よく「ないと開けないのでは」と聞かれます。結論、必須ではありません。調理師免許がなくても飲食店は開けます。
複数の解説でも、開業に必要なのは調理師免許ではなく、主に食品衛生責任者と防火管理者だと明記されています。
資格と届出の違いも、ここで整理しておきます。資格は「人」に紐づくもの。食品衛生責任者や防火管理者は、特定の人が講習を受けて取得します。
一方、届出や許可は「店・営業」に紐づくもの。営業許可や開業届は、店舗や事業に対して行政へ出す手続きです。この区別を意識すると、後の手続きが頭に入りやすくなります。
必ず取得する資格と取り方・費用・期間

ここからは実際の取り方です。私が同行した範囲では、食品衛生責任者の講習は1日で終わり、その日のうちに修了証が出る自治体がほとんどでした。
食品衛生責任者の講習は通常1日程度。受講料は自治体によって異なりますが、公開情報では約1万円前後です。
講習内容は、衛生法規・公衆衛生学・食品衛生学の3分野が中心。難しい試験というより、1日座って学べば修了できる内容です。落とすための講習ではありません。
注意したいのは、費用が全国一律ではない点。「ネットで見た金額と違う」という相談を受けることがありますが、これは自治体差です。申込みは管轄の食品衛生協会で確認してください。
次に講習免除の話。栄養士・調理師など所定の資格を持つ人は、食品衛生責任者の講習受講が不要と案内されています。
つまり調理師免許を持っているなら、講習を受けずに食品衛生責任者になれます。手元の資格証を捨てずに、保健所の事前相談で見せてください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 講習期間 | 通常1日程度 |
| 受講料 | 約1万円前後(自治体で異なる) |
| 免除対象 | 調理師・栄養士など所定の有資格者 |
| 申込先 | 管轄の食品衛生協会など |
防火管理者は、収容人員30人以上の飲食店で必要になります。ここでいう収容人員は、お客さんの数だけでなく従業員を含めた人数です。
小さな店なら不要なこともありますが、「30人」のカウントを甘く見て後で慌てる方がいます。席数とスタッフを足して見積もってください。
さらに店舗の広さで種別が分かれます。延べ面積300㎡以上なら甲種、300㎡未満なら乙種が必要です。
| 条件 | 必要な種別 |
|---|---|
| 収容人員30人未満 | 原則不要 |
| 収容人員30人以上・延べ面積300㎡未満 | 乙種防火管理者 |
| 収容人員30人以上・延べ面積300㎡以上 | 甲種防火管理者 |
防火管理者の講習は消防署など主催で行われます。日程が少なく予約が埋まりやすいので、開業が決まったら早めに枠を押さえるのが私のおすすめです。
開業に必要な届出と申請の全体像
資格を取ったら、次は届出。ここが手続きの本番です。筆頭は飲食店営業許可で、これがないと営業できません。

飲食店営業許可は、店舗所在地を管轄する保健所へ申請します。申請の目安は、オープンの10日〜2週間前まで。
流れはおおむね、事前相談→申請書提出→現地検査→許可証交付の順。検査に合格して初めて許可証が出るので、内装工事の前に保健所へ相談するのが鉄則です。
手数料は自治体差があります。公開情報では、東京都で18,300円です。
深夜にお酒を出す店は、もう1つ届出が要ります。深夜0時以降にお酒をメインで提供する場合、深夜酒類提供飲食店営業開始届出書を警察署へ出します。
バーや居酒屋を深夜営業する予定なら、これを忘れがち。図面の添付や要件があり、私の体感ではここが一番手間取る届出です。早めに準備してください。
事業の形態に応じた手続きも忘れずに。個人で開くなら税務署へ開業届。法人として開くなら、まず会社設立の登記が必要です。
個人事業の開業届は、開業日から原則1か月以内に提出します。青色申告承認申請書を一緒に出しておくと、節税の面で後が楽になります。
従業員を雇うなら、労働・社会保険の届出も発生します。人を1人でも雇えば労災保険、条件を満たせば雇用保険・社会保険の手続きが必要です。
| 届出 | 提出先 | 目安時期 |
|---|---|---|
| 飲食店営業許可 | 管轄の保健所 | オープン10日〜2週間前 |
| 深夜酒類提供飲食店営業開始届出書 | 管轄の警察署 | 深夜にお酒を出す場合 |
| 個人事業の開業届 | 税務署 | 開業から原則1か月以内 |
| 労働保険・社会保険 | 労基署・年金事務所など | 従業員を雇う場合 |
一人で全部はキツい、と感じたらここが専門家に頼む分かれ目です。営業許可と税務だけ自分でやり、深夜営業や社会保険は専門家に振る、という分担もよくやります。
業態別で追加になる許可・届出
同じ飲食店でも、業態によって追加の許可が出てきます。ここを見落とすと開業直前に止まります。

カフェやバーは、基本的に飲食店営業許可でカバーできます。ただしバーで深夜にお酒を出すなら、前述の深夜酒類提供の届出が必要です。
テイクアウトも、店内調理した料理をその場で持ち帰ってもらう範囲なら飲食店営業許可の範囲内のことが多いです。ただし販売形態によっては別の許可が絡むので、保健所で事前確認してください。
キッチンカーは、飲食店営業許可とは別物だと考えてください。移動販売は車両ごとの営業許可が必要で、給排水タンクの容量など車両の設備基準があります。
菓子製造をして店頭やネットで売るなら、菓子製造業の許可が別途必要になることがあります。「カフェで焼いたお菓子を箱詰めして売りたい」というケースで、これが抜けていた相談は実際にありました。
| 業態 | 追加で必要になりやすいもの |
|---|---|
| バー(深夜営業) | 深夜酒類提供飲食店営業開始届出書 |
| テイクアウト | 販売形態により別許可(要事前確認) |
| キッチンカー | 車両ごとの営業許可・設備基準 |
| 菓子製造・販売 | 菓子製造業の許可 |
そして全業態に関わるのがHACCP。2021年6月から、原則すべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務化されました。
といっても、小規模な飲食店は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」でよく、業界団体の手引書に沿って衛生管理計画を作り、日々の記録をつける形が中心です。大げさに身構える必要はありません。
営業許可の施設基準と保健所検査で落ちないコツ

正直に言うと、開業でつまずく人が一番多いのがこの施設基準です。資格より、ここで止まる。内装が終わってから直すのは時間も費用も痛い。
施設基準は自治体ごとに条例で定められますが、共通して見られるのは厨房と客席の区画、手洗い設備、シンクの数、床壁の清掃しやすさ、給湯設備などです。
特に手洗い専用のシンクは指摘の定番。「食器を洗うシンクと兼用」では通らないことが多いです。図面の段階で専用の手洗いを確保してください。
流れは、事前相談→申請→現地検査の順。私は内装業者と契約する前に、必ず図面を持って保健所へ事前相談へ行きます。これだけで手戻りが激減します。
検査で指摘されやすいのは、手洗いの不足、シンクの数や大きさ、厨房と客席の仕切り、戸棚の扉、換気や照明など。床に物が直置きされていて指摘、というのも現場ではよくあります。
| 項目 | ありがちな指摘 |
|---|---|
| 手洗い設備 | 専用の手洗いがない・位置が不適切 |
| シンク | 数や大きさが基準を満たさない |
| 区画 | 厨房と客席の仕切りが不十分 |
| 収納 | 食材・器具の直置き、扉のない棚 |
検査に落ちると、再検査でオープンがずれます。だからこそ、工事前の事前相談に勝るものはありません。
費用の総額シミュレーションと開業スケジュール
「結局いくらかかるの」という質問が一番多いので、資格と届出に絞った費用を出します。物件取得費や内装費はここには含めていません。

確かな数字として言えるのは、食品衛生責任者の受講料が約1万円前後、東京都の営業許可手数料が18,300円という点です。防火管理者の講習費用や深夜営業の届出費用は自治体・状況で差が大きいため、ここでは断定しません。
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 食品衛生責任者 受講料 | 約1万円前後(自治体で異なる) |
| 飲食店営業許可 手数料 | 18,300円(東京都) |
| 防火管理者 講習 | 自治体・種別により異なる |
| 開業届 | 無料(税務署提出) |
つまり、最低限の資格と営業許可だけなら、東京都で3万円前後から見ておけば大きく外れません。専門家への依頼費はこれとは別です。
スケジュールは逆算が肝心。オープン日から逆に組みます。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 2〜3か月前 | コンセプト・物件・資金、保健所へ事前相談 |
| 1〜2か月前 | 食品衛生責任者・防火管理者の講習を受講 |
| 10日〜2週間前 | 営業許可を申請、現地検査 |
| 開業直前 | 深夜酒類届出・開業届・各種保険手続き |
講習は枠が限られます。物件が決まった時点で講習を予約するくらいでちょうどいいです。
申請をラクにしたいなら、食品衛生申請等システムなどのオンライン申請も使えます。窓口に並ばず、自宅や店から申請でき、私も書類の下準備で活用しています。電子申請の可否は自治体で異なるので、事前相談のときに確認してください。
失敗しないための注意点とよくある質問
最後に、放っておくと痛い目を見るポイントを正直にお伝えします。
営業許可を取らずに営業すれば、食品衛生法違反として処分の対象になります。許可なし営業は、停止や罰則のリスクがあるということ。深夜酒類の届出漏れも同様に指導・処分の対象です。
資格の更新についても触れておきます。食品衛生責任者には実務上、定期的な実務講習の案内が来る自治体があります。防火管理者も再講習が必要なケースがあるので、修了証をなくさず保管してください。詳細は管轄に確認を。
自分でやるか、専門家に頼むか。私の本音を言えば、営業許可と開業届だけなら自力で十分です。ただ深夜営業の届出や、複数の許可が絡む業態、社会保険まで含むなら、行政書士など専門家に頼む価値は大きいと感じています。
そしてもう一つ大事なのが、地域差。施設基準も手数料も自治体ごとに違います。「他県のブログで読んだ通りにやったら、うちの保健所では通らなかった」というのは本当によくある話。最終判断は必ず管轄の保健所・消防署で確認してください。
よくある質問
迷ったら、今日できる一歩は「管轄の保健所に事前相談の電話を入れる」こと。これだけで、あなたの開業はぐっと現実に近づきます。
