食品衛生責任者の資格の取り方|費用・手順・受講免除まで徹底解説

私は行政書士として飲食店の開業支援を8年やってきました。保健所への同行や許可申請の現場で見てきた「ここでつまずく」「ここを勘違いする」ポイントを交えながら、取り方を順番に解説します。
この記事で分かること:資格の役割と必要な業種/申込みから修了までの手順/費用の内訳/集合型とeラーニングの選び方/受講免除になる資格/開業タイミングと営業許可の関係。
食品衛生責任者とは?資格の役割と必要性

食品衛生責任者は、飲食店や食品を扱う施設で衛生管理を担当する人のことです。食品衛生法第51条により、食品を取り扱う施設ごとに選任することが義務付けられています(公衆衛生への影響が少ない一部の営業は除く)。
つまり、飲食店を開くなら原則として店ごとに1人必要、ということ。営業許可の申請書にもこの欄があります。
資格が必要な業種・選任が不要な業種
飲食店営業、菓子製造業、食肉販売、喫茶店など、食品を調理・製造・販売する施設では選任が必要です。一方、公衆衛生に与える影響が少ないとされる一部の営業は対象外になります。
自分の業態が必要かどうか迷ったら、出店先の保健所に業種を伝えて確認するのが確実です。私も申請前に必ず保健所へ業種区分を確認しています。
食品衛生責任者と食品衛生管理者の違い
名前が似ていて混同されやすいのですが、別物です。食品衛生責任者は一般の飲食店・食品施設で必要なもの。食品衛生管理者は、乳製品や食肉製品など特に衛生管理が必要な特定の製造業で必要となる、より専門的な資格です。
普通に飲食店を開くなら、必要なのは食品衛生責任者の方です。ここを取り違えると講習選びを間違えるので注意してください。
全国共通で使える資格かどうか
資格そのものは全国で通用する考え方ですが、講習会を実施しているのは各都道府県・市の食品衛生協会です。実施主体は地域によって異なり、東京都は一般社団法人東京都食品衛生協会、大阪府は公益社団法人大阪食品衛生協会が担っています。
後述しますが、他の都道府県で修了した人もそのまま責任者になれる自治体が多く、引っ越しのたびに取り直す必要はありません。
食品衛生責任者の資格の取り方【手順を順番に解説】
ここからが本題。所要時間の目安は、講習自体が約1日(おおむね6時間程度)。難易度は低く、講習を最後まで受ければほぼ取れます。前提条件は「満18歳以上」「日本語の読み書き・会話ができること」などで、横浜市では高校生は不可とされています。

資格の取り方は大きく2つ。調理師・栄養士などの特定資格を持っているなら申請だけで取得でき、持っていないなら養成講習会を受けます。ここでは講習会を受けるルートを4ステップで説明します。
ステップ1:受講資格と前提条件を確認する
まず自分が受講対象かを確認します。横浜市の例では、満18歳以上(高校生不可)かつ日本語の読み・書き・会話ができる方が条件です。
ここまで確認して「自分は対象だ」と分かればOK。なお、すでに調理師などの資格がある人は、講習を受けず免除申請に進めます(第5章で解説)。
ステップ2:講習会の種類(集合型・eラーニング)を選ぶ
講習会には会場に行く集合型と、自宅で受けるeラーニング型があります。eラーニングは東京都・札幌市・横浜市・埼玉県・千葉県・大阪府など全国で実用化されています。
どちらでも取れる資格は同じ。自分の生活リズムで選べば大丈夫です。選び方の詳細は第4章にまとめました。
ステップ3:受講を申し込む
申込みは、お住まい・出店先の地域の食品衛生協会へ。インターネット申込みと窓口申込みの両方を用意している自治体が多く、名古屋市はインターネットと窓口の両方で受け付けています。
申込みが完了して受講日が確定すれば、この段階はクリア。人気の日程は埋まりやすいので、開業予定が決まったら早めに押さえてください。
ステップ4:受講して修了証を受け取る
講習では食品衛生学・食品衛生法・公衆衛生学の3科目を学び、確認試験に合格する必要があります。受講後に修了証(または食品衛生責任者手帳)が交付されます。
この修了証が手元に来れば取得完了。営業許可申請の際に番号や写しを使うので、なくさないよう保管してください。
資格取得にかかる費用の総額と内訳
「いくらかかるの?」もよく聞かれます。横浜市では会場型・eラーニング共通で11,000円。この中にテキスト代も含まれているのが一般的で、追加で大きな出費は基本ありません。

受講料・テキスト代など費用の内訳
横浜市の例を表にまとめます。受講料は地域によって差があるため、最終的には出店先の食品衛生協会の金額を確認してください。
| 項目 | 内容 | 金額 |
|---|---|---|
| 受講料(テキスト代込み) | 会場型・eラーニング共通 | 11,000円 |
| 支払い方法 | 窓口申込みは持参、インターネット申込みは後日振込 | ― |
正直に言うと、費用面で迷う要素はほとんどありません。1万円台で取れて期限もないので、開業を決めたら早めに受けてしまうのが私のおすすめです。
申込みから修了までの日数とスケジュール感
講習自体は1日で完結します。問題は「希望の日程に空きがあるか」。集合型は月数回の開催で枠が埋まることもあり、申込みから受講日まで日が空くケースがあります。
eラーニングなら自分のペースで進められるため、急ぐ人はこちらが速いことが多いです。営業許可の段取りと並行して、まず受講日を確保するのが失敗しないコツです。
集合型とeラーニングはどっちがいい?比較と選び方

取れる資格も学ぶ3科目も同じなので、選ぶ基準は「自分の都合に合うか」だけです。両方が全国で実用化されているので、好きな方を選べます。
| 項目 | 集合型 | eラーニング |
|---|---|---|
| 受講場所 | 指定の会場 | 自宅などネット環境がある場所 |
| 日程 | 開催日が固定 | 自分のペースで進めやすい |
| 向いている人 | 一気に集中して終えたい人 | 通学が難しい・忙しい人 |
| 注意点 | 枠が埋まることがある | ネット環境と機器が必要 |
集合型のメリット・デメリットと向いている人
集合型の良さは、1日会場に行けばその日のうちに終わること。講師に直接質問できる安心感もあります。
デメリットは、開催日が決まっているため自分の予定と合わせにくい点。日中まる1日拘束されるので、店舗準備で忙しい時期だと組みにくいこともあります。
eラーニングのメリット・デメリットと向いている人
eラーニングは自宅で空き時間に進められるのが最大の利点。会場まで行く時間も交通費もかかりません。開業準備で動き回る人ほど助かります。
一方で、ネット環境と対応機器が必要で、自分で計画的に進める意思が要ります。私の実感では、忙しい開業前の方にはeラーニングを勧めることが多いです。
当日の持ち物・服装・受講の流れ
集合型の当日は、受講票・本人確認書類・筆記用具を持参するのが基本です。服装の指定は特にありませんが、長時間座るので楽な格好で問題ありません。
流れは、受付→3科目の講義→確認試験→修了証交付、という順番。詳細な持ち物は申込み先の案内に従ってください。
確認テストの有無とスムーズに修了するコツ
講習の最後に確認試験があります。とはいえ、講義をきちんと聞いていれば答えられる内容で、落とすための試験ではありません。
スムーズに終えるコツは、講義中に強調されたポイント(温度管理や手洗いなど基本事項)をその場で押さえること。難しく構える必要はありません。
受講が免除される資格と確認方法
見落としがちですが、特定の資格を持っていれば講習を受けずに食品衛生責任者になれます。すでに該当資格がある人は、1万円払って1日講習を受ける必要はありません。

栄養士・調理師・製菓衛生師など免除対象の資格
免除対象となる主な資格を表にまとめます。これらを持っている場合は、食品衛生協会へ申請して食品衛生責任者手帳の交付を受ける形になります。
| 区分 | 資格の例 |
|---|---|
| 調理・製菓 | 調理師、製菓衛生師 |
| 栄養 | 栄養士 |
| 食品衛生関連 | 食鳥処理衛生管理者、と畜場法に規定する衛生管理責任者・作業衛生責任者 |
| その他 | 船舶料理士 |
免除を受けるための手続きと確認先
手続きは、資格を証明する書類を添えて地域の食品衛生協会に申請するのが基本。免除対象の細かな範囲は自治体ごとに案内が出ています。
大阪市や宇都宮市は対象資格のリストを公式に示しているので、自分の資格が該当するか不安なときはそちらで確認できます。
開業・出店時の取得タイミングと営業許可の関係【現場の注意点】
ここが一番つまずきやすいところ。費用を払って受けたのに開業に間に合わなかった、という事態を避けるための話です。営業許可と資格取得の順番を整理します。

営業許可申請と資格取得の順番
営業許可の申請には食品衛生責任者の選任が前提になります。理想は、許可申請の前に修了証を手にしている状態。私が支援するときは、内装工事と並行して講習日を先に押さえてもらいます。
ここまで段取りできていれば、許可申請でつまずくことはまずありません。
間に合わないときの対処法
どうしても開業に講習が間に合わない場合、保健所によっては「受講予定であること」を誓約する形で申請を受け付けてくれることがあります。ただし扱いは自治体ごとに違います。
間に合わなそうだと感じた時点で、自己判断せず保健所へ早めに相談してください。これが一番の保険です。
資格の有効期限・更新・引っ越し時の扱い

「資格って更新が必要なの?」という不安にお答えします。結論、取得後の有効期間や更新・期限は設定されていません。一度取れば生涯有効です。
有効期限の有無と実務講習会の必要性
資格自体に期限はありません。ただし、自治体によっては最新の衛生情報を学ぶための実務講習会への参加を案内している場合があります。これは資格を失わせるものではなく、知識のアップデートが目的です。
他都道府県で取得した資格の有効性
引っ越しても取り直しは原則不要です。宇都宮市では、他の都道府県(または市)の養成講習を修了した人も、改めて講習を受けずに食品衛生責任者になれると案内しています。
念のため、転居先の保健所で扱いを一度確認しておくと安心です。
修了証を紛失したときの再発行手続き
修了証や手帳を紛失した場合は、講習を実施した食品衛生協会へ再発行を申請します。受講した協会の管轄が決まっているため、まずは取得した地域の協会へ問い合わせるのが近道です。
再発行には本人確認書類や手数料が必要になることがあるので、連絡時に必要書類を確認してください。
よくある質問(FAQ)
開業相談で実際によく受ける3つの質問に、要点だけ短く答えます。

よくある質問
最後に一言。食品衛生責任者は1日で取れて期限もない、開業準備の中では難易度の低いタスクです。後回しにして許可申請で慌てる人を何人も見てきました。出店を決めたら、まず受講日を一つ押さえる。それが一番確実な一歩です。
